コラム

古い家の地震対策、何から始める?耐震診断と補強の進め方【松本市の補助制度つき】

「古い実家に住み続けたいけれど、大きな地震が来たら大丈夫だろうか」。そんな不安を感じながらも、何から始めればいいか分からず、そのままになっている方も多いのではないでしょうか。

松本市は、市の耐震診断の案内の中で、市域に「糸魚川-静岡構造線断層帯を抱えて」いることに触れ、住宅の耐震化を呼びかけています。地震への備えは、まず「今の家がどのくらい地震に強いのか」を知ることから始まります。

この記事では、耐震診断の流れと結果の見方、補強の考え方、松本市の補助制度の使い方と注意点を順番に解説します。

結論:まずは耐震診断で「今の家の強さ」を知りましょう

古い家の地震対策は、次の順番で進めるのが基本です。

・相談:建築時期、図面の有無、気になる点を伝える
・耐震診断:家の地震への強さを調べ、数値で評価する
・補強計画:診断結果と家の造りに合わせて、補強の方法を検討する
・工事:補助制度を使う場合は、交付決定を受けてから契約・着工する

「どこを補強すればいいか」は家ごとに違います。診断をせずに工事を決めると、必要な場所が補強されなかったり、費用に見合った効果が得られなかったりすることがあります。

相談→診断→補強計画→工事の流れ図

なぜ古い家の耐震化が必要なのか

1981年以前の家は特に確認を

国土交通省は、昭和56年(1981年)以前の建物は「旧耐震基準」で建てられており、耐震性が不十分なものが多いと説明しています。

耐震化はまだ途中

国土交通省の資料によると、令和5年時点の住宅の耐震化率は全国で約90%、耐震性が不十分な住宅は約570万戸と推計されています。戸建て住宅に限ると耐震化率は約85%です。同じく国土交通省の取りまとめでは、長野県は86%、松本市は90.0%(いずれも令和5年時点)とされています。数字の上では多くの住宅が耐震化されていますが、旧耐震基準の戸建ての耐震化率は約40%前後(残りの約6割は耐震性不足の可能性が高い)、共同住宅の耐震化率で言えば約60%〜70%程度です。耐震性不足の住宅総数が全国に約450万〜570万戸ほど残されていると考えられます。まだ対策が必要な住宅も残っているということです。

耐震診断とは?流れと結果の見方

耐震診断で分かること

耐震診断は、家の壁の量や配置、柱と梁の接合部、基礎、劣化の状態などを調べ、地震への強さを評価するものです。古民家など伝統的な造りの家は、一般的な木造住宅と構造の考え方が異なる部分があるため、家の造りに合った方法で診断することが大切です。

松本市の無料耐震診断(2026年度)

松本市の木造住宅耐震診断は、2026年4月1日から受け付けています。主な条件は次のとおりです。

・昭和56年5月31日以前に市内で着工した、木造在来・伝統構法の一戸建て
・個人が所有し、原則として現在住んでいる住宅(アパート・貸家・離れは対象外)
・過去に市の診断を受けていないこと
・原則として平成17年6月1日以降に増改築をしていないこと

申し込みは、意向確認票を市の住宅課へ提出します。診断は受付順に、市が委託した「長野県木造住宅診断士」が行います。

診断結果(総合評点)の見方

診断結果は「総合評点」という数値で示されます。松本市の案内では、次のように区分されています。

 

総合評点 判定
1.5以上 安全と思われます
1.0以上1.5未満 一応安全と思われます
0.7以上1.0未満 やや危険です
0.7未満 倒壊又は大破壊の危険があります

 

総合評点が1.0未満の場合、松本市の耐震改修補助の対象になります。

耐震補強の主な方法

補強の方法は、診断結果と家の造りによって選びます。代表的なものは次のとおりです。

 

補強の方法 内容 主な目的
壁の補強 筋交いや構造用合板で、地震に耐える壁を増やす 揺れに抵抗する力を高める
接合部の補強 柱と梁、柱と土台のつなぎ目を金物などで補強する 地震時に柱が抜けるのを防ぐ
基礎の補強 ひび割れの補修や、基礎の増し打ちを行う 建物を支える足元を強くする
屋根の軽量化 重い屋根材を軽い屋根材に替える 地震時の揺れを小さくする
劣化部分の補修 腐朽した土台・柱の交換、シロアリ被害の補修 本来の強さを取り戻す

 

家全体のバランスが大切

壁を増やす場合も、家の一部だけを強くすると、かえってバランスが悪くなることがあります。どこにどれだけ補強するかは、診断結果をもとに計画します。

壁・接合部など補強する場所を示した図

断熱やリフォームと一緒に行う

耐震補強で壁や床をはがすときは、断熱リフォームや内装の改修を一緒に行うと、工事の重複を減らせることがあります。当社のコラム「これからも安心して住むために。リフォームでできる”耐震”の備え」もあわせてご覧ください。

松本市の耐震改修補助(2026年度)

松本市の木造住宅耐震改修補助は、2026年4月1日から先着順で受け付けています。市の耐震診断で総合評点が1.0未満と判定された住宅が対象です。

 

区分 内容 補助の割合 限度額
A事業(補強工事) 耐震補強工事 対象工事費の5分の4以内 115万円
A事業(除却) 住宅の除却(解体) 2分の1以内 97万8,600円
B事業(上乗せ) 補強工事費が200万円を超える場合 超えた額の2分の1以内 30万円
B事業(上乗せ) リフォームを併せて行う場合 2分の1以内 10万円

 

B事業はA事業への上乗せで、単独では申請できません。対象となる経費は、原則として昭和56年5月31日以前に着工した部分の工事費です。

長野県の上乗せ補助(2026年度)

市の補助に加えて、長野県の住宅の耐震改修への上乗せ補助を利用できる場合があります。県の案内(2026年7月16日更新)によると、主な内容は次のとおりです。

・補助額:耐震改修の工事費から市町村の補助額を差し引いた額に対し、最大50万円を上乗せ
・対象:市町村から交付決定を受けており、耐震改修後の総合評点が1.0以上となる方
・申請:市町村の交付決定後、工事完了までに、原則「ながの電子申請サービス」で申請
・実績報告の締め切り:2027年3月19日

県の上乗せ補助は予算の範囲内で実施されます。市と県の両方の手続きが必要になるため、申請の時期や必要書類は施工会社と一緒に確認しながら進めましょう。

補助額の計算例

松本市の案内にある補助の割合と限度額をもとに、補助額の考え方を計算例で示します(市の補助のみで計算しており、県の上乗せ補助は含めていません。実際の補助額は、対象となる経費や審査によって決まります)。

 

補強工事の対象工事費 A事業(5分の4以内・限度115万円) B事業(200万円を超えた額の2分の1以内・上限30万円) 市の補助の合計の目安
100万円 80万円 なし 80万円
150万円 115万円(120万円は限度額を超えるため) なし 115万円
250万円 115万円 25万円 140万円
300万円 115万円 50万円は上限を超えるため30万円 145万円

 

このように、工事費が一定額を超えると補助額は限度額で頭打ちになります。リフォームを併せて行う場合のB事業(2分の1以内・限度額10万円)を含め、どの区分が使えるかは市の審査によって決まるため、計画の段階で施工会社と確認しましょう。

最も注意したいのは「申請の順番」

松本市の案内では、補助金の交付決定(契約・着工が可能となる日)までに一定の期間がかかること、そして契約・着工した後では補助金は交付されないことが示されています。補助制度を使う場合は、工事の契約をする前に施工会社と相談し、手続きの順番を確認しましょう。

診断の前に、ご自身で確認できること

耐震診断を申し込む前に、次のような点を確認しておくと、相談がスムーズになります。

 

確認すること 確認の方法
建てた時期 建築確認の書類、登記の記録、家族の記憶
増改築の有無と時期 過去の工事の契約書、家族の記憶
図面の有無 建築時の図面、増改築時の図面
気になる症状 戸の開け閉めのしにくさ、床の傾き、外壁や基礎のひび割れ
屋根の種類 瓦屋根か、金属などの軽い屋根か

 

建てた時期が分からない場合も、相談は可能です。登記の記録などで確認できることもあります。

補強工事の前後で知っておきたいこと

補強とあわせて生活の安全も見直す

耐震補強とあわせて、寝室に背の高い家具を置かない、家具を固定するといった対策も大切です。建物を補強しても、家具の転倒によってけがをするおそれがあるからです。

工事中の暮らし方を確認する

補強工事では、壁や床をはがして作業することがあります。工事をする部屋の荷物の移動や、工事中に使えない部屋があるかどうかを、事前に確認しておきましょう。

補助制度を使う場合の手続きの流れ

松本市の補助制度を使って耐震補強を行う場合、おおまかな流れは次のようになります。各段階の細かな手続きや必要書類は、市の案内で確認してください。

 

段階 内容 注意点
1. 耐震診断の申し込み 意向確認票を市の住宅課へ提出する 対象となる住宅の条件を事前に確認する
2. 耐震診断 市が委託した長野県木造住宅診断士が診断する 診断は受付順に行われる
3. 補強計画・見積もり 診断結果をもとに補強の方法と費用を検討する 断熱や内装の改修を一緒に行うかもここで検討する
4. 補助金の申請 補強計画と見積もりをもとに申請する 受付は先着順
5. 交付決定 市から交付決定を受ける 交付決定までは契約・着工しない
6. 契約・工事 交付決定後に契約し、工事を行う 工事中の暮らし方を事前に確認する

 

とくに5の交付決定の前に契約や着工をしてしまうと、補助を受けられません。「早く工事を始めたい」というときほど、手続きの順番を施工会社と確認しながら進めましょう。

古民家・伝統的な造りの家で気をつけたいこと

古民家など伝統的な造りの家は、太い柱や梁、土壁などで構成されていることが多く、一般的な在来工法の木造住宅とは地震の力の受け止め方が異なる部分があります。そのため、壁を増やす、金物で固めるといった一般的な補強方法が、そのまま合うとは限りません。

松本市の無料耐震診断は、木造在来構法だけでなく伝統構法の一戸建ても対象としています。古民家の耐震補強を考えるときは、建物の造りに合った診断を受け、残したい柱や建具、土間などの雰囲気も含めて、補強の方法を検討することが大切です。

耐震補強と一緒に検討したい工事

耐震補強では、壁や床、天井をはがして作業することがあります。そのタイミングで、次のような工事をあわせて検討すると、工事の重複を減らせる場合があります。

 

一緒に検討したい工事 理由 確認したいこと
断熱改修 壁や床をはがすときに断熱材を入れやすい 断熱の補助制度の対象になるか
屋根の葺き替え 重い屋根を軽くすると、地震時の建物への負担を減らせる 屋根材の種類と、下地の傷み具合
水回りの改修 床をはがすときに配管も確認・更新しやすい 配管の劣化状態と、工事中に使えない期間
内装・間取りの見直し 補強する壁の位置とあわせて、使いやすい間取りを考えられる 補強に必要な壁を残したまま間取りを変えられるか

 

ただし、工事をまとめると一度の費用は大きくなります。補助の対象になる経費と対象外の経費を分けて見積もってもらい、予算に合わせて範囲を決めましょう。

補強工事とあわせて、家の中でできる地震への備え

建物の補強に加えて、家の中の備えも見直しておくと安心です。

・寝室や子ども部屋には、背の高い家具をできるだけ置かない
・背の高い家具は、壁に固定する、L字金具や突っ張り棒を使うなどして転倒を防ぐ
・出入り口や廊下の近くに、倒れやすいものを置かない
・窓ガラスの近くで過ごす時間が長い場合は、飛散防止フィルムなども検討する

家具の固定は、壁の中に下地があるかどうかで方法が変わります。リフォームの際に、家具を固定したい位置に下地を入れておくこともできます。

よくある失敗と注意点

失敗1:診断を受けずに工事を決めてしまう

「壁を増やせば大丈夫」と考えて工事を決めても、家の弱い部分が補強されていなければ、十分な効果が期待できません。まずは診断で弱点を確認しましょう。

失敗2:先に契約して補助金が使えなくなる

前述のとおり、交付決定の前に契約・着工すると補助を受けられません。急いで工事を進めたいときほど、手続きの順番に注意が必要です。

失敗3:劣化を放置したまま補強する

土台の腐朽やシロアリ被害が残っていると、補強の効果が十分に発揮されないことがあります。補強と一緒に、劣化部分の補修も検討しましょう。

失敗4:補助の対象外の工事も同じ見積もりにまとめてしまった

補強工事と内装のリフォームを同じ見積もりにまとめると、どこまでが補助の対象になるのかが分かりにくくなります。補助の対象となる経費と、それ以外の工事を分けて見積もってもらうと、手続きも予算の検討もスムーズになります。

よくある質問

Q. 古民家でも耐震補強はできますか?

  1. 多くのケースで対応できます。伝統的な造りの家は、一般的な木造住宅とは構造の考え方が異なる部分があるため、家の造りに合わせた診断と補強計画が大切です。

Q. 住みながら工事できますか?

  1. 工事の範囲によって異なります。補強する部屋を順番に工事する方法もありますが、大がかりな工事では仮住まいが必要になることもあります。

Q. 耐震補強をすれば、地震で壊れないのですか?

  1. 耐震補強は地震による被害を小さくするための工事で、どのような地震でも被害がないことを保証するものではありません。診断結果をもとに、目標とする強さを一緒に検討します。

Q. 耐震診断を受けたら、必ず補強工事をしなければいけませんか?

  1. いいえ。診断結果を見たうえで、工事をするかどうか、どこまで行うかをご家族で検討していただけます。

Q. 補強工事の費用はどのくらいですか?

  1. 家の大きさや構造、診断結果、補強の方法によって大きく異なります。診断結果をもとに補強計画をつくり、見積もりでご提示します。補助制度の対象になるかどうかもあわせて確認しましょう。

Q. 耐震診断だけを受けて、工事は後で考えてもいいですか?

  1. 問題ありません。診断で家の弱点を知っておくだけでも、家具の配置を見直したり、ほかのリフォームを計画するときに補強もあわせて考えたりできます。補助制度は年度ごとに内容や受付状況が変わるため、工事を考える時点で改めて確認しましょう。

Q. 古民家の雰囲気を残したまま補強できますか?

  1. 残したい柱や梁、建具などを事前に伺い、それらを生かしながら補強の方法を検討します。ただし、建物の状態によっては、補強のために手を加える必要がある部分もあります。どこを残し、どこを補強するかは、診断結果をもとに一緒に考えていきましょう。

Q. 松本市の補助の対象にならない場合、ほかに方法はありますか?

  1. 補助の対象にならない場合でも、診断結果をもとに必要な補強を計画することはできます。補強の範囲を優先順位の高い場所に絞る、ほかのリフォームとあわせて計画するなど、予算に合わせた進め方をご相談ください。

まとめ:建築時期と図面を用意して、まずは診断の相談を

古い家の地震対策は、耐震診断で今の家の強さを知ることから始まります。建築時期が分かるものや図面があれば、ご用意いただくと相談がスムーズです。

フルハタ建設には、耐震診断士や耐震設計施工技術者の資格を持つスタッフが在籍しています。塩尻市の木造住宅で、耐震診断と県・市の補助金を活用した耐震改修を行った現場は、信越放送(SBC)でも紹介されました。古い家・古民家の地震対策について、お気軽にご相談ください。

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